自主事業アーカイブ

アウトリーチ「リコーダーとリュート」

講師は、吉澤実さん(リコーダー)と永田平八さん(リュート)。
吉澤さんは長年、横浜国立大学、東京藝術大学で教鞭をとりながら、国内外でのコンサート他、「題名のない音楽会」「ららら♪クラシック」などで演奏活動をされています。
永田さんは、宮崎駿監督のスタジオジブリ作品「天空の城ラピュタ(英語版)」「もののけ姫」等でリュート演奏を担当された経歴を持つ他、演劇、ミュージカルの音楽監督、作曲家としても活躍されています。

そんな豪華なお二人による、2日間のアウトリーチ。いざ出発です!

1日目 高田特別支援学校

9時頃、高田特別支援学校へ到着しました。生徒数は350人程。ソーシャルディスタンスを保つために、第一部は小学部と中等部、第二部は高等部と分け、30分ごと公演されました。

栗とトンボで飾られた秋を感じる入場口から、演奏をしながら登場。
「PCR検査はばっちり受けてきました!なので安心してくださいね。」
吉澤さんは、先生や子供たちに開口一番に説明されていました。

吉澤さんの隣に、ずらりと並ぶ楽器たち。
大小様々なリコーダーをはじめ、角の笛、岩の笛など、ちょっと変わった笛までもが勢揃いです。
「昔の人が笛を吹くと…なんと小鳥が応えたのです。それから何か月も小鳥に歌を教えようと吹いていると、10ヶ月ほどでついに“ド・レ・ミ”と音を覚えました!こんな経緯から、「to record(小鳥のように歌う)」という古英語が語源となって「リコーダー」ができたと言われています。」

吉澤さん頭から二本角がニョッ!
これは角笛といい、動物の角の先端に開けられた吹き口から息を入れて演奏します。
哺乳動物の立派な角。その音色はオカリナのような優しい響きがしました。

続いて見えるはただの岩…?いえいえ、これも立派な笛です。
約5000年前から使用されていたという、非常に古い楽器「岩笛」。水にさらされ、雨に打たれて小石の一部分に穴が開き、そこに息を吹き込んで音を鳴らします。
「ピィーーーッ!」と甲高く鳴り響く神秘的な音。あまりの音量に、子供たちはビクッ!中には耳を塞ぐ子も。しかし、みんな吉澤さんが演奏する姿をじっと見つめていました。
「この音を聞くと、眠っていた魂が蘇るかもしれませんよ…」

イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ…各国の曲が演奏されていきます。気分はまるで世界旅行!
曲が終わるごとに、割れんばかりの拍手がお二人を包みます。
子供たちからお礼の言葉と花束のプレゼントがありました。

アンコールは、みんなもよく知る「ピタゴラスイッチ」。
元気な手拍子が体育館に鳴り響き…とっても元気だったために演奏を追い越してしまいました。
「みんな聞こえたかな?もう一回。今度は小さな拍手でお願いね。」笑いながら吉澤さん。
マイクに楽器を近づけて再挑戦…今度はみんなにちゃんと聞こえたようです!体育館に笑顔が溢れました。

2日目 上杉小学校

8時半、上杉小学校へ出発。
車中で、「昨日、春日山神社まで行ってきました。」と永田さん。昨日の公演が午前中に終わったため、午後にホテルのレンタル自転車で向かわれたとのこと。道中のほとんどが坂道だったため、筋肉痛にならないか心配されていました。今日はなんとかセーフ!
先行く道路の両側は稲刈りの終わった田んぼ群。水辺を飛ぶ赤とんぼ達が、秋を予感させます。

10時半、開演。換気の為開けられた窓から、爽やかな風が駆け抜けます。
初めて見る楽器の数々に、子供たちは興味津々の様子でした。

リュートの重さはなんと500mg!5㎜ほどの薄い木で作られているためとても軽いそうです。
「僕の小指だけで持てちゃうかもしれない!?」と吉澤さん。
永田さんが吉澤さんの小指に引っ掛け、手を離すと…落っこちることなくぷらんと支えられるリュート!
「えー!すごい!」「持てちゃった!」子どもたちから驚きの声が上がりました。

「小・中学校、高校の音楽の教科書を書いているので、教科書には僕の写真が載っています。実はみんなのそばにいつもいたんです!」 ニコニコな吉澤さんに、またもや驚かされる子供たち。
「みんな大切にしてね。」
教材用のCDにも、吉澤さんが演奏された曲が収録されているとのことで、
本当に子供たちの身近で見守ってくださっているようです。

今度は縦笛ではなく、フルートや能管などの横笛の紹介。
「みんなはもう秋見つけたかな?」と吉澤さん。
田楽笛とリュートの、哀愁に満ちた演奏が繰り広げられます。曲名は「小さい秋見つけた」。
聞いたことのあるメロディが、お二人の演奏によって一味も二味も違って聞こえました。

素敵な演奏に、最後は子供たちから花束のプレゼント。
「生の音を聞く機会は、今、とても貴重です。今日の体験は本当にありがたいこと。大切にしていきたいです。」
と、校長先生からもお礼の言葉がありました。

高田西小学校

12時半頃、高田西小学校に到着。準備の前に一旦腹ごしらえです。
学校も給食の時間。お昼の放送で流れる「紅葉」に、なんだか懐かしい気持ちになります。

今回も、ソーシャルディスタンスを保つために、1~3年生と4~6年生の2グループに分かれての公演です。
授業でも使っているソプラノリコーダーよりも大きいテナーリコーダーやバスリコーダーの紹介。
「わー!」「でかい!」子供たちから歓声が上がります。
続いて、手のひらよりも小さなリコーダーで、軽やかに演奏する吉澤さん。
ざわざわとしていた体育館に、一瞬の静寂。
リコーダーの音色があまりに小鳥の鳴き声にそっくりで、びっくりしてしまったのでしょうか。

永田さんが編曲された「ジブリメドレー」。みんなもよく知った名曲が演奏されます。
「君をのせて(天空の城ラピュタ)」が流れると、かすかに子供たちの歌声が!
一人二人とさらに声が重なり合い、素敵なハーモニーとなって体育館へ響き渡りました。

演奏が終わり、子供たちから御礼の言葉を受け取ったお二人。
そのお返しに吉澤さんは…
「“いつも何度でも”僕たちのことを思い出してほしいから、最後にこの曲を送ります。」
「風邪ひかないでね。コロナにも気を付けてね。」
何度も優しい言葉をかけ、「いつも何度でも(千と千尋の神隠し)」を演奏されました。

日差しは強くとも風爽やかな2日間のアウトリーチ。無事に終了となりました。