自主事業アーカイブ

アウトリーチ「和太鼓」

国内外で活躍されているアーティストを招き、身近に芸術文化に触れる「アウトリーチ事業(出張公演)」。
令和3年度最初のアウトリーチ事業となる今回は、上雲寺小学校と南本町小学校にて、上田秀一郎さんによる和太鼓の公演を行いました。

6月2日(水) 上雲寺小学校 開場13:45 開演14:00

午前11時頃、松の木がそびえ立つ上雲寺小学校にて上田さんと合流。さっそく搬入と準備に取り掛かりました。
大小様々な和太鼓をケースから取り出し、次々に組み上げていきます。
これらの太鼓の並べ方は、師匠の林英哲氏から伝授されたものであり、オーケストラや洋楽のアーティストとコラボする為に考案されたとのことでした。

リハーサルが終わると、校長室をお借りして昼食の時間。 昼食後は、念入りに打ち合わせを行いました。

14時、いよいよ開演です。
上田さんが一番大きな平胴太鼓を、ドン!と鳴らすと、ビクッと体を揺らして驚く子供たちでしたが、次第に堂々とした演奏に釘付けになって見入っていました。

昔から太鼓は、リズムを言葉に直して伝えられてきたとのこと。
上田さんは、歌舞伎や落語の寄席で上演を知らせるために鳴らす「一番太鼓」や、終演時に鳴らす「追出太鼓」を叩いて見せ、「どんな言葉に聞こえたかな?」と子供たちに問いかけました。
昔の人々の知恵と工夫、そして言葉のリズムの面白さを思い知らされます。

一番太鼓「どんとこーい どんとこい!」
追出太鼓「出てけ出てけ出てけ出てけ でんでんばらばら…」

最後の曲は、和太鼓独奏「(ひかり)道標(みちしるべ)」を演奏。
体育館には太鼓の音だけが響き、力強く、どこか厳かな雰囲気を持つ演奏に、子供たちは固唾を飲んで見守ります。
子供たちからはお礼の言葉と花束が贈られ、アウトリーチ1日目は無事に終了しました。

6月3日(木) 南本町小学校 開場10:15 開演10:30

2日目は、今年で創立130周年を迎えた、南本町小学校でのアウトリーチでした。
8時45分、南本町小学校へと到着。搬入・準備を開始しました。
総勢251名の児童と先生が体育館に集合し、いよいよ開演です。

「一番大きな太鼓が平胴太鼓、胴の長いものが長胴太鼓、縄で締められた締太鼓に、桶の形をした桶太鼓…」
順番に太鼓の紹介を進める上田さん。
最後に、皮だけが張られた太鼓を指しながら「これは何という名前の太鼓でしょう?」と問いかけました。子供たちは太鼓の形から「お皿太鼓!」「おぼん?」と次々に連想しますがなかなか当たらず…
「ヒントは、これからの季節に使う物」と上田さんがお話しすると、ついに「団扇太鼓!」と声が上がります。
上田さんの「正解!」の声と共に、体育館中から拍手が巻き起こりました。

太鼓紹介の後、各学年から一人ずつ代表者6名が前に出て、太鼓の演奏体験をしました。
子供たちは真剣な表情で、上田さんからバチの持ち方、打つ姿勢などを教わっていました。
上田さんの掛け声に合わせていよいよバチを振り下ろします。始めはバラバラだった音も、何度も繰り返すうちに一つの音のように揃っていきました。
最後は、上田さんが作曲した「南本町小学校音頭」での合同演奏です。
①新潟、②上越市、③南本町小学校、④みなほん(南本町小学校の略称)、⑤上越市立南本町小学校の5つの言葉を、繰り返したり強弱をつけたりして歌い、言葉のリズムに合わせて太鼓を打つという、南本町小学校だけの特別な音頭でした。
他の子供たちも手拍子で参加し、最後は「ヤーッ!」という掛け声とともにポーズを決めました。

最後の演目は上田さんが自ら作曲された「光の道標」。10年前に起きた東日本大震災の避難所でのご自身の経験から、被災者を力づけたいという想いが生まれ作曲に至ったとのこと。
握りこぶしの力強い音色に、子供たちからは驚きの声が上がりました。
終演後は、子供たちからお礼の言葉と花束が贈られ、上田さんは笑顔で受け取りました。
これにて無事、2日間のアウトリーチが終了となりました。

ちょっと寄り道…

6月2日(水)
上雲寺小学校を出発した我々は、とあるところへ寄り道をしました。
それは、緑が青々と生い茂る春日山神社。
「太鼓は木や動物から命を頂いて作られる楽器。」と話していた上田さんは、神社へ参拝したのち、境内にそびえる一本の木に両手を添え、祈るように目を閉じていました。
命への感謝を伝え、この大きな木から伝わるエネルギーをわけていただいていたのかもしれません…